ケーススタディー
知っておきたい遺産相続の基本知識 遺族が行う手続きガイド⑤
亡くなった人が遺した財産を引き継ぐ遺産相続は、とても重要な手続きのひとつです。
相続の手続きには期限を過ぎてしまうとできなくなってしまうものや、不利益を受けてしまうものもあります。
遺産相続の基本を知り、該当する手続きや期限を確認しましょう。
プラスの財産とマイナスの財産とは?知りたい!遺産相続の基本
あなたが財産を相続することになったとき、自分が何をどれだけ引き継ぐことになるか知っていますか?
遺産相続で必要な手続きについて、全体の流れを大まかに把握した上で「期限のある手続き」と「自分に該当する手続き」、そして「遺産の内容」を確認しておきましょう。
相続とは、誰かが亡くなった時に、亡くなった故人の遺産(財産)を、配偶者や子などの親族が引き継ぐことを言います。
被相続人が亡くなると相続開始地(被相続人の最後の住所)において相続は開始し、被相続人が所有していた遺産(財産)は相続人に引き継がれます。
被相続人とは、相続財産を残して亡くなった人のことです。
相続人とは、亡くなった人の遺産(財産)を引き継ぐ権利がある人や、引き継ぐことになる立場の人のことをいい、実際に相続するのか放棄するのかは別として、相続の権利がある人のことを法定相続人といいます。
相続が開始された直後に法定相続人が複数名いる場合は、遺産分割協議がされるまでの間だけ、相続財産はこの全員で共有する財産となります。
この場面において、相続財産を共有する人たちを共同相続人といいます。
「遺産相続」という制度は、遺された財産をめぐって紛争が生ずるなどの弊害を防止するために設けられている公的な制度です。
では相続財産とされるものには、どのようなものがあるのでしょうか。
相続財産とは、相続によって相続人に引き継がれることになる、故人が亡くなった時点で所有していた権利義務の一切ことをいいます。いわゆる遺産と同じと考えても問題はありません。
一般的に相続財産というと預貯金や有価証券、不動産や自動車などプラスの財産というイメージが強く持たれますが、相続財産はこのようにカタチのある財産に限られません。
財産には、住宅ローンを含む借入金や医療費の未払金などの負債であるマイナスの財産も含まれますので、思わぬ不利益を受けることになり相続人にとって負担となり得るものもあります。
マイナスの財産を引き継ぎたくないという相続人には、相続放棄という手続きが認められていますが、法律上の申請期限や要件といったルールが決められています。
◆遺産相続で行う手続きの流れ◆
①相続人の調査・相続人の確定
②遺言の捜索
③遺言の検認
④相続財産の調査・確定
⑤相続放棄・限定承認
⑥遺産分割協議(調停・審判)
⑦所得税の準確定申告
⑧相続税申告
⑨各種相続(名義変更など)手続き
財産の相続とは何か?知っておきたい遺産相続の基本知識もあわせてご覧ください。
相続人になるのは誰?遺産相続には優先順位と範囲があります。
相続が発生したときに法定相続人になる人と、原則的な相続財産の割合(法定分割)である法定相続分(法定相続人の取り分)は法律で定められています。
法定相続人になるのは、相続が開始された時点において存在している配偶者・子・直径存続・兄弟姉妹であり、それ以外の方は親族であったとしても法的相続人にはなりません。(遺贈を受けることはできます。)
ここでおさえておきたいポイントは、法定相続人の間にも優先順位が定められているため、配偶者・子・直径存続・兄弟姉妹の全員が法的相続人になるわけではない、という点です。
被相続人と相続人の関係性や、相続人となる順位は以下の通りです。
◎常に相続人となる「配偶者」・・・被相続人に配偶者がいる場合、その配偶者に順位はなく、各順位の相続人と共に、必ず相続人となります。
◎第1順位「子」・・・子が故人の場合は孫、孫も故人の場合はひ孫となります。子には養子も含まれ、実子と同じ相続分を有します。子が2人以上いる場合には、子の相続分を等分することになります。
◎第2順位「直系尊属」・・・子がいない場合は、直系尊属が法定相続人となります。直系尊属とは、父母や養親、祖父母や曽祖父母などのことで、相続人には最も親等が近い人になります。直系尊属が父と母など複数人の場合は、直系尊属の相続分を等分することになります。
◎第3順位「兄弟姉妹」・・・子も直系尊属もいない場合は、兄弟姉妹が法定相続人となります。なお、半分だけ血がつながっている兄弟姉妹の相続分は、全部血がつながっている兄弟姉妹の2分の1となります。
第1順位である子が故人よりも先に死亡している場合は、孫が子に代わって相続します。(代襲相続)
孫も先に死亡している場合は、ひ孫が相続します。(再代襲相続)
第3順位である兄弟姉妹が先に死亡している場合は、甥・姪が代襲します。
ただし、甥・姪の子は再代襲しません。
戸籍謄本などを調査して正確な相続人を特定しましょう。
相続の手続きを行う際、法定相続人が誰であるかを確認することができる相続関係の証明資料として、戸籍謄本などの書類提出を求められる場面が多くあります。
被相続人の死亡の事実が記載されているのは「戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)」、または「除籍謄本(除籍全部事項証明書)」ですが、戸籍は転籍や戸籍法の改正や婚姻などによって都度新しくつくられるため、被相続人と相続人の相続関係を証明するためには十分と言えません。
正確な相続関係を証明するためには、被相続人の戸籍を順番に遡って読み解いていく必要がありますので、出生から死亡するまでにつくられたすべての戸籍を知るために、書き替えをする前の「改製原戸籍謄本」などを必要に応じて請求しましょう。
必要な戸籍謄本を取得できたら、相続人を特定します。
なお、正式な遺書がある場合は、被相続人の死亡事項が記載されている戸籍謄本(除籍謄本)と、相続人あるいは受遺者(遺贈受ける者として遺言で指定された人)であることの証明のみで足りる場合もあります。
ただし、遺言書の検認などを行う場合には、基本的には死亡から出生までさかのぼった戸籍が必要になります。
戦災による消失や保存期間の経過による廃棄などで、古い除籍謄本や改製原戸籍謄本が取得できない場合は、追加で何らかの書類の提出を求められる可能性がありますので、それぞれ手続きを行う先に対応方法を確認しましょう。
また、戸籍調査を行った結果、想定外の法定相続人が見つかるということもあります。
しかし、全く面識のない相手であったとしても、その法定相続人を除いて相続手続きを進めることはできません。
遺言の有無などによって対処の方法も変わりますが、手紙や訪問、あるいは弁護士などの専門家を通して遺産分割協議に参加してもらうなど協力してもらうよう取り計らいましょう。
除籍謄本や改製原戸籍謄本についてくわしくはコチラもあわせてご覧ください。
戸籍謄本の請求方法についてくわしくはコチラでご紹介しています。
相続手続で必要になる印鑑証明書や住民票の写し
遺産相続に関わる様々な手続きの中で、相続人の「印鑑証明書」や「住民票の写し」、亡くなった方の最後の住所地を証明する「住民票の除票の写し」と言った書類を求められることがあります。
住民票の写しは、住所地の市区町村役場に請求します。
戸籍謄本などと同様、住民票の写しも、個人情報保護の兼ね合いから取得できる人が制限されており、代理人が請求する場合は、委任状の提出が必要です。
住民票の除票の写しには、住民票に記載されている事項のほかに、 転出の場合には転出先の住所と異動年月日が記載され、死亡の場合には死亡年月日が記載されます。
書類は「元の住所地」や「死亡時の住所地」で作成されるもので、除票となった住民票の保存期間は住民登録がなくなってから5年と定められています。
それ以降は履歴自体が廃棄となり、交付・発行することができませんので注意が必要です。
これらの請求先は、住民登録している、または、消除された住民票がある市区町村役場となりますが、遠方から請求しなければならない場合には、郵便の請求も可能です。
また、遺産相続の手続きにおいて、相続人の登録印鑑が地方公共団体に登録されているものであることを証明するために印鑑登録証明書の提出を求められる場面があります。
印鑑登録証明書は、「印鑑登録証(印鑑カード)」で住所地の市区町村役場の窓口、もしくはお近くのコンビニエンスストアで発行・取得することができます。
印鑑登録証(印鑑カード)を発行してもらうためには、印鑑登録を済ませている必要があります。
まだ行っていない場合は、市区町村役場で印鑑登録を行いましょう。
3か月以内に発行されたものなど、発行期限を確認されることがほとんどですので、手続きを行う前に書類の有効性を確認しておきましょう。
戸籍謄本や住民票の写しなど相続手続きで必要な証明書を確認しよう。もあわせてご覧ください。
家族が亡くなった時に必要な手続きについてこちらもあわせてご覧ください。
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