18歳までの子がいない妻の遺族厚生年金に加算される給付「中高齢寡婦加算」と18歳の誕生日の属する年度末までの子がいるときに支給される「児童扶養手当」、ともに受給するためには要件がありますので確認しましょう。
遺族厚生年金に加算される「中高齢寡婦加算」を知っていますか?
厚生年金の被保険者であった夫が亡くなった場合に、遺族「厚生」年金の受給要件には該当するけれども遺族「基礎」年金の支給要件には該当しない(18歳未満の子がいない)妻や、遺族「基礎」年金の給付が終了した妻に給付される年金の加算制度「中高齢寡婦加算(ちゅうこうれいかふかさん)」をご存知でしょうか。
遺族厚生年金に加算されるものですので、前提として遺族「厚生」年金を受け取っていることが必要です。
「夫に先立たれて遺族となった妻」が遺族厚生年金に対して、「40歳から65歳になる前まで」加算・支給される有期年金です。
また、寡婦とは夫と死別した後も再婚せずにいる女性(未亡人)のことをいいますので、対象は妻(女性のみ)となっており、妻が死亡した時の夫にはこの中高齢寡婦年金制度や、それに類する給付はありません。
◆中高齢寡婦加算を受給するために満たしておく要件を確認しましょう◆
妻に必要な条件
①夫の死亡当時、40歳以上65歳未満であり、「子」がいないこと。
②夫の死亡当時、40歳未満だったが、40歳に達した当時「子」がいるため遺族基礎年金を受けていた。
※この場合の「子」とは18歳の年度末を経過していない子または20歳未満で1級・2級の障害を持つ子をいいます。
この要件を満たしている場合でも、妻が65歳になると自分の老齢基礎年金が受けられるようになりますので、中高齢寡婦加算の給付は打ち切りとなります。
死亡時の夫に必要な条件
①被保険者であること
②被保険者期間中の病気やケガが原因で、初診日から5年以内に死亡した
③1級・2級の障害厚生年金の受給権者であること
④老齢厚生年金の受有権者または受給資格期間を満たしている場合、厚生年金の被保険者期間が20年以上あること
◆65歳以降の加算になる経過的寡婦加算があることをご存知ですか?◆
遺族となった妻が40歳以上65歳未満(中高齢)の場合に、他の要件を満たすと対象となる「中高齢寡婦加算」の他にも、遺族厚生年金には「経過的寡婦加算」という加算給付の制度があります。
経過的寡婦加算とは、遺族「厚生」年金を受けている妻が65歳になり、自分の「老齢基礎年金」を受けるようになったときに、65歳までの「中高齢寡婦加算」に代わり加算される一定額のことで、支給開始は65歳からとなっています。
経過的寡婦加算の対象者となる要件
・中高齢寡婦加算されていた「昭和31年4月1日以前生まれ」の「遺族厚生年金の受給権者」である妻が65歳に達したとき
・昭和31年4月1日以前生まれの妻であり、65歳以上で遺族厚生年金の受給権が発生したとき(この場合は中高齢寡婦加算は受けていない)
・死亡した夫の共済組合などの加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が、20年以上である、または40歳以降に15年以上ある場合
上記要件に該当しない「昭和31年4月1日以降に生まれた人」には加算しないということになります。
この経過的寡婦加算という制度は対象者の範囲も限定的で、いずれ消滅するものであるといえます。
なお、遺族厚生年金の受給者が、「障害基礎年金の受給権」も同時に有しているときは、経過的寡婦加算は支給停止となります。(障害基礎年金が支給停止になっている場合は除く)
中高齢寡婦加算の額は、「遺族基礎年金の4分の3の額」ですので、平成29年度は年額584,500円が受給できる遺族厚生年金の加算額となります。
子供がいる方の生活を支える児童扶養手当とは
父または母が亡くなってしまった場合や、父母の離婚により、父母どちらか一方からしか養育を受けられないひとり親家庭などの児童のために、地方自治体から支給される手当のことです。
所得が低い方や遺族年金の受給要件に該当しない方で、子どもがいる場合には、安定した生活を支える大切な手当となります。
◆児童扶養手当はどのような場合で、誰が受け取れるの?◆
児童扶養手当の支給対象者は、日本国内に住所があり、18歳に達する日以降の最初の3月31日までの子、もしくは、20歳未満で障害(1級・2級)のある子を監護する父母や、父母に代わって子を養育している方(祖父母など)で、下記のいずれかに該当する方です。
児童扶養手当の支給要件
・父または母が死亡した子ども
・父母が婚姻を解消した子ども
・父または母が一定程度の障害の状態にある子ども
・父または母の生死が明らかでない子ども
・その他(父母が裁判所からのDV保護命令を受けた子どもや、1年以上遺棄している子どもなど)
児童扶養手当における「子」とは18歳に達する日以降の最初の3月31日までの子、もしくは、20歳未満で障害(1級・2級)のある子です。
これまで公的年金(遺族年金、障害年金、老齢年金、労災年金、遺族補償など)を受給している方は、所得制限により児童扶養手当を受給できませんでしたが、平成26年12月以降、「児童扶養手当法」の一部が改正されたことにより、年金額が児童扶養手当額より低い方は、その差額分の児童扶養手当を受給できるようになりました。
受給している年金額が児童扶養手当の額よりも低いかどうかは、お住まいの市区町村にて相談、確認ができます。
また、この法改正により、次のような場合などが新たに手当を受け取れる対象となります。
・お子さんを養育している祖父母などが、低額の老齢年金を受給している
・父子家庭で、お子さんが低額の遺族厚生年金のみを受給している場合
・母子家庭で、離婚後に父が死亡し、お子さんが低額の遺族厚生年金のみを受給している場合 など
ただし、受給資格者(母子家庭の母、父子家庭の父など)や、受給資格者と生計を同じくする民法上の扶養義務者(子どもの祖父母など)の所得が一定以上あるときは、前年の所得による所得制限により、手当の全部または一部の支給が停止されます。
◆児童扶養手当の請求方法◆
児童扶養手当を受給するには、お住まいの市区町村役場の窓口への申請手続きが必要です。
申請には「認定請求書」の他、戸籍謄本などの支給要件に該当する事実が分かる書類、住民票など世帯状況が分かる書類、所得の状況がわかる書類などが必要となります。
提出書類は該当する要件や市区町村によって異なる場合がありますので、くわしくは提出先にお問い合わせください。
児童扶養手当は届出を済ませただけで支給されるというものではなく、認定請求をして受給の審査を受ける必要があります。
また、申請手続きが完了し、支給が認められた後は、毎年8月に世帯の状況や所得の状況などを確認する「現況届」を市区町村に提出します。
この現況届を2年間続けて提出しないと受給資格を失いますので留意しておきましょう。