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土地・株式の評価額計算と納税申告 遺族が行う手続きガイド⑰

土地や株式の評価を行い、申告・納税しましょう。

 

申告・納税には期限があるのでご注意ください!

 

 

土地の評価額を計算してみましょう

 

相続財産の大半を占める土地。

 

これをどう評価するかで、相続税額は大きく変わります。

 

亡くなった日の残高が、そのまま相続税の評価額になる預金とは違い、土地は特別な方法で評価額を求めるため、難しいと思われがちですね。

 

しかし、相続財産の大半が自宅の土地だということは、決してめずらしくないことですから、自分でも大まかに土地の評価額を知っていた方が安心です。

 

◆宅地◆

 

宅地とは、自宅や賃貸アパート、事務所用のビルが建っている土地や貸借地、借地権などのことをいいます。

 

宅地の評価額を求めるには、路線価方式と倍率方式のどちらかを使用します。

 

路線価方式・・・路線価に面積をかけて評価する方法

 

倍率方式・・・固定資産税評価額に倍率をかけて評価額を求める方法

 

路線価と倍率は国税庁のホームページに公表されており、誰でも確認できます。

 

固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書に同封されている「平成〇〇年度固定資産税・都市計画税課税明細書」に記載があるので、土地の所有者であれば自分で確認できます。

 

◆農地(田・畑)、山林◆

 

通常は倍率方式で評価しますが、宅地へ転用できる可能性を考慮して、居住や商店が多いエリアである市街地の農地は、宅地比準方式(農地が宅地であると仮定した評価額から、転用する場合にかかる造成費相当額を控除した金額により評価する方法)で評価します。

 

◆雑種地(駐車場などの土地)◆

 

その雑種地の近くにあり、状況がよく似た土地(近傍地)の、1㎡あたりの価額に面積をかけて求めます。

 

詳しくは都税事務所や市区町村の固定資産税課で確認します。

 

 

土地の評価額算定

 

土地の評価の専門家といえば不動産鑑定士です。

 

しかし、相続税では原則として、不動産鑑定士の評価額を用いることはできません。

 

また、土地の評価は「土地をどう区切るか」も大きなポイントとなっています。

 

自宅の土地の一部を駐車場として近隣の人に貸している場合には、自宅と駐車場を別々に区切って評価します。

 

それにより、評価額が上下することがあります。

 

◆計算例を参考にし、自宅の土地を評価してみましょう◆

 

早速、自宅の土地の評価額を計算してみましょう。

 

まずは国税庁のホームページの評価倍率表で自宅の町名を探します。

 

「路線」と書かれていたら路線価方式、「1.1」などの倍率が書かれていたら倍率方式で評価することになります。

 

路線価方式

 

市街地にある宅地は、その宅地が面している道路につけられた路線価(その道路に面する標準的な宅地の1㎡あたりの価額)に、面積をかけて評価額を求めます。

 

また、標準的な形の土地でない場合、例えば、形がいびつであったり、間口がせまいといった事情を加味するため、補正率で調整を行います。

 

【例】86万円(路線価)×0.097(間口狭小補正率)×100.00㎡(面積)=8,342万円(評価額)となります。

 

倍率方式

 

市街地から離れた地域にある宅地は、固定資産税評価額に倍率をかけて価額を求めます。

 

面積をかけるのではないので、注意しましょう。

 

【例】2,000万円(固定資産税評価額)×1.1(倍率)=2,200万円(評価額)となります。

 

このように自宅の評価額をある程度知っておくと、相続が発生したときに協議しやすくなります。

 

 

 

株式の評価額を確認しましょう

 

株式には上場株式非上場株式があります。

 

上場株式とは東京証券取引所をはじめとした金融商品取引所に上場されている株式のことをいいます。

 

取引所が公表している課税時期(死亡日)の最終価格によって評価します。

 

課税時期が取引所の休日で、取引自体がないときには、課税時期に一番近い日の最低価格を使用することになっています。

 

ただし、上場株式の株価は大きく変動する可能性が高いため、亡くなった月・その前月・その前々月の「毎日の最終価格の平均額」を「課税時期の最終価格」と比較して、もっとも低い価格を使ってもかまわないことになっています。

 

非上場株式とは取引相場のない株式であり、会社に対する支配力の強さに応じた方法で評価します。

 

原則・特例のどちらになるかは、「同族株主」かどうかによります。

 

取引相場のない株式は、「誰が相続するか」によって評価額が変わります。

 

一般的には、株式を相続した人が会社に対する支配力が強いオーナー一族などの「同族株主」なら、会社の利益や資産などをもとにした原則的評価方式で評価します。

 

また、支配力が弱いその他の株主なら、配当だけをもとにした特例評価方式(配当還元方式)で評価します。

 

自分が同族株主かどうかは、自分と親族の議決権割合の合計が、全体の3割以上になるかで判断します。

 

ただし5割超の人がいるときには、5割を超えた人だけが同族株主になります。

 

原価的評価方式には「類似業種比準方式」「純資産価額方式」「両方の併用方式」の3つの方式があります。

 

どれを使用するかは、従業員数や総資産価額、年間取引金額により、会社の規模を大中小に分けて判断します。

 

◆特定会社の評価の特例◆

 

株式保有特定会社や土地保有特定会社、開業後3年未満の会社などは、同族株主なら純資産価額方式、その他なら配当完全方式で評価します。

 

株式保有特定会社とは、課税時期において、株式等の総資産価額に占める割合が50%以上の会社が該当します。

 

土地保有特定会社とは、課税時期において、総資産価額に占める土地の割合(土地保有割合)が一定の割合以上の会社が該当します。

 

また、会社の規模は財産評価基本通達によって、従業員数や業種、総資産価額などで大中小会社に分けられています。

 

開業後3年未満の会社等とは、課税時期において、開業後の経過年数が3年未満である会社に該当する評価会社をいいます。ただし、開業前または休業中の会社、及び清算中の会社に該当する場合は除かれます。

 

 

相続税の申告書を作成しましょう!

 

◆相続税を申告しなければならない人は?◆

 

「課税価格」が「遺産に係る基礎控除額」を超える場合には、税務署に相続税の申告書を提出し、相続税を納める義務があります。

 

ただし、1億6,000万円が法定相続分のどちらか大きい財産額までなら配偶者が無税で相続できる配偶者の税額軽減や、故人が自宅などに使っていた土地につき、課税価格が8割または5割減額される小規模宅地等の特例を使えば、相続税を納める必要のない人なども、特例の適用を受けるには、必ず申告書を提出しなければなりません

 

申告・納税の期限は、相続の開始があったことを知った日(通所は死亡日)の翌日から10か月以内です。

 

◆相続税の申告手続◆

 

相続税の申告書は、通常、相続人など申告義務のある人の全員(被相続人から相続または遺贈により財産をもらった人)が共同で1通を作成し、同じ書類に記名押印した上で、故人の死亡時の住所地の所轄税務署に提出します。

 

相続税の申告書は、計算書や明細書を合わせるとたくさんの様式がありますので、必要なものだけを作成しましょう。

 

また変更などもありますので、国税庁のホームページ確認し、最新の様式を使用するようにしましょう。

 

◆相続税の納税手続◆

 

相続税の納期限は、申告書の提出期限と同じ、相続の開始があったことを知った日(通常は死亡日)の翌日から10か月以内です。

 

納期限までに現金で、かつ、一括で納めることになります。

 

相続以外の税金は、口座引き落としなどで簡単に納める方法もありますが、相続税は申告書の提出先所轄税務署か金融機関の窓口に出向き、現金で納めなければなりません。

 

納付書は、税務署には必ずありますが、金融機関にはないこともありますので、事前に準備しておきましょう。

 

また故人がそれなりの資産家だった場合、税務署はおそらく相続税がかかるだろうと判断し、家族宛に相続税の申告書や納付書を送付します。

 

届かない場合には、電話で依頼し郵送してもらいましょう。

 

◆一括払いできない場合◆

 

1日でも納期限を過ぎてしまうと、本来払うべき相続税に加え、利息である延滞税を払う義務が生じますので、注意しましょう。

 

また遺産の大半を土地や建物などの不動産が占めているなど、相続税を一括で納めるのが難しい場合には、例外的に、分割払いの延納や物で払う物納という納税方法が認められることもあります。

 

◆税務調査とペナルティー◆

 

税務調査とは、提出された申告書に誤りや不明点があり、詳しく調べたいという場合に行われます。

 

これは、強制調査ではなく、納税者の承諾を得て任意に行われるものです。

 

事前に税務署から相続人に連絡があり、日程の調整に応じてもらえます。

 

また、税理士の立合いも認められています。

 

相続税は、税務調査を受ける確率が、所得税などの他の税金に比べかなり高いという特徴があります。

 

所得税や法人税などについて、税務調査を受ける確率は5%以下ですが、相続税は申告書を出すと、約25~30%の確率で実際に税務署などの方がやってきます。

 

そのうちの8割以上の人が、何らかの申告もれを指摘されています。

 

期限までに申告された財産を種類別にみてみると、土地や建物などの「不動産」が全体の半分以上を占めているのに対し、申告もれになっている財産は、「現金や預貯金」が4割近くと、一番多くなっています。

 

金融資産の「所有者が誰か」を考えるとき、「名義が誰か」という点はあまり重視されません。

 

財産の名義が亡くなった人ではなくても、故人の稼ぎがもとになっている財産には、相続税がかかります。

 

専業主婦や未成年の子ども名義の金融資産がある場合には、本当の所有者が誰なのかという点につき、十分検討するようにしましょう。

 

申告もれ・納税不足には利息制裁が科せられます。

 

・延滞税(年9.1%)・・・納期限に遅れて納税したとき

・過少申告加算税(10%・15%)・・・期限までに申告納税したが不足があったとき

・無申告加算税(5%・15%・20%)・・・期限までに申告納税しなかったとき

・重加算税(35%・40%)・・・仮想隠蔽など故意に税を逃れようとしたとき

 

◆修正申告・更生の請求をするとき◆

 

納めた相続税が少なすぎたら「修正申告」をします。

 

いつまでに、という期限はありませんが、できるだけ早く行うようにします。

 

理由として、延滞税が増えるということと、過少申告加算税がかかってしまうからです。

 

また、不正に相続税を免れようとした場合には、遅れた日数の全期間分延滞税を納めなければなりません。

 

さらに、この場合には制裁金も過少申告加算税ではなく重加算税がかかります。

 

財産を隠すと、通常より多くの税金がかかってしまいますので、結局損をしてしまいます。

 

相続税は不正のないよう納めましょう。

 

◆相続税を多く納めすぎたら◆

 

本来納めるべき相続税より多く納めすぎた場合には、更正の請求を行えば還付を受けられます。

 

更正の請求の期限は、相続税の申告期限から5年以内です。

 

また、間違いを税務署の側から直されることもあります。

 

税理士に相続税の申告作業を依頼して。きちんと納税まで済ませていても、その後の税務調査で何らかの間違いを指摘されることもあります。

 

その指摘に納得できないなどの理由から、自主的に修正申告を行わない場合には、税務署が更正という処分を行います。