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遺言書の作成方法とエンディングノートについて

1、遺言書ってなに?規則・特性について

 

遺言書とは、被相続人が自分の死後に、遺産相続に関する指示を残せる最後の意思表示であり、遺産分割方法の指定や相続人同士のトラブル防止、自分の遺産を自由に扱うことを明記できるものです。

 

「検認」という作業を家庭裁判所が行ない、遺言書として無効であると判断されない限りは、法律で定められた相続の規定よりも優先される重要なものです。

 

そのため、遺言書があった場合、遺産分割協議に優先して、遺言書の内容に沿った遺産相続が行なわれることになります。

 

遺言書は、遺産相続の場面では欠かすことのできない重要なものであり、遺言書の有無で、遺産分割の進み具合に大きな差が出てくるものです。

 

しかし、遺言書を必要とする人が多い一方で、必ず必要となるものではありません。

 

 

2、遺言書はどのように作ればいい?

 

ここでは、遺言書の書き方について、要点を紹介しますので、ご参考にしていただければと思います。

 

<遺言書を欠く際のルール>
①遺言書は全文直筆で書く
②遺言書と分かりやすく明記する
③遺言書には作成年月日、署名、捺印をする
④ボールペンなど、消しゴムで消せない物を使用する
⑤相続財産は特定できるように書く
⑥相続人が特定できるように書く
⑦各相続人の相続分も分かりやすく書く
⑧遺言執行者を指定しておく
⑨遺言書を封筒に入れて開かれないよに印鑑を押す

 

図:遺言書の例文

               
    遺言書    
               
  遺言者・○○○○は、この遺言書により次の通り遺言する  
               
  一、妻、○○○○(昭和〇年〇月〇日生まれ)に次の財産を相続させる
  1、 土地          
    所在地 大阪府○○市○○町〇〇丁目    
    番地 〇番地〇        
    地目 宅地        
    面積 ○○○、〇平方メートル    
  2、 建物          
    右同所所在 家屋番号 〇番〇      
    木造瓦葺二階建住宅        
    床面積 一階 ○○、〇平方メートル  
      二階 ○○、〇平方メートル  
  3、 ○○銀行○○支店の遺言者名義の普通預金(普通番号0123456)
    の全て          
               
  二、長男○○○○(昭和〇年〇月〇日生まれ)に次の財産を相続させる 
  1、 遺言者名義の○○株式会社 ○○万株(○○証券○○支店に委託)
               
  三、この遺言の執行者として次の物を指定する    
    大阪府○○市○○町○○丁目〇番〇号    
    行政書士 ○○○○        
               
               
  平成○○年〇月〇日          
    大阪府○○市○○町〇丁目〇番〇号    
    遺言者  ○○ ○○(昭和〇〇年〇月〇日生まれ)  印
               
               

 

また、遺言書は3つの種類に分けることが出来ます。

 

①自筆証書遺言

民法で定められている遺言書の書き方や方式としては最も簡単なものになり、遺言者が自分で字を書ける方で、印鑑を所持していれば、いつでも自由に作成が可能なのが特徴です。

 

②公正証書遺言

遺言者が公証人2名の前で遺言の内容を口頭で説明し、その内容に基づいて公証人が遺言者の発言を正確に文章にまとめるという書き方で、公証人を挟むなどいくつかの手順を踏んで作成するため、作業時間がかかりますが、遺言書の真正性が問題となることがないため、遺言書の検認作業は必要がありません。

 

③秘密証書遺言

自筆証書遺言と公正証書遺言の間のような遺言書で、遺言者が自分で書いた遺言書を、公証人に指示して所定の処理をするという方式で書かれたもので、手続きを経由することでその遺言書が間違いなく遺言者本人のものであることを明確にでき、内容を誰にも公開する事無く秘密にできるのが特徴となります。

 

結果としてはどの方法が良い悪いではなく、遺言者本人の意思で、最も適していると思われるものを選択いただければと思います。

 

  自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
手軽さ もっとも簡単 難しい やや難しい
費用 かからない 公証役場手数料16,000円~ 公証役場手数料11,000円~
証人 不要 2名必要 2名必要
保管 どこに保管しても良い 原本は公証役場 正本写しは本人

本人、推定相続人、遺言執行者など

秘密性 遺言の存在と内容の両方を秘密にできる 遺言の存在と内容を秘密にできない 遺言の内容のみ秘密にできる
紛失・偽造の可能性 ある 紛失の場合は再発行できる ある
検認 必要 不必要 必要
有利な点 費用が掛からず、証人も不要でいつでもどこでも簡単に書ける

・家庭裁判所での検認は不要

・無効な遺言書となる事がない

・分記しても再発行してもらえる

・公証役場に提出するので、作成日が特定できる

・費用があまりかからない

不利な点

・紛失、変造等の可能性が高い

・遺言書の要件を満たしてないと無効となる可能性が高い

・家庭裁判所での検認が必要

費用が余分にかかる

・紛失、変造の可能性がある

・遺言の要件を致してないと無効な遺言となる可能性がある

・家庭裁判所での検認が必要

 

 

3、家族間のコミュニケーションが大事

 

遺言書について、その作成の仕方や種類について述べてきましたが、ここではご家族のコミュニケーションの大切さについて触れていきます。

 

遺言書をどのような場所、場面で作成するのかは、皆さんそれぞれ異なりますが、亡くなる前に決めておきたいこと、遺される家族へ伝えたいことをまとめるのが遺言書です。

 

そのため、遺言書を作成する際には、周囲の方とよく相談して頂きたいと思いますし、普段の生活の中であまり会話されてないのであれば「遺言書を作る」という機会をきっかけにして、是非コミュニケーションを図っていただければと思います。

 

遺品整理を行う際、遺言書が遺されていた場合は、遺言書で指定された流れでことを運び、執り行なわなくてはなりません。

 

しかし、それがご遺族にとって望ましい形なのかは遺品整理業者にはわかり得ないことなのです。

 

それでは、生前整理やデジタル生前整理のように、高齢者と長く接していた中で起こり得た遺品整理の場合であればどうでしょう。

 

遺言書の中で遺品整理をどのように執り行えばよいか指定してもらえるだけで、どんなに作業が進めやすいかということを感じた方も多いはずです。

 

なぜなら、どんな希望を叶えて作業をすればよいか分からないからです。

 

無理に作成させるものではありませんが、ご家族とのコミュニケーションを図っていただいて、適切な遺言書を作っていただくことは、私たち遺品整理業者にとっても、プラスなことだという認識をお持ちいただけると幸いです。

 

 

4、エンディングノートと遺言書の違いは?

 

◆主な遺言書とエンディングノートとの違い◆

 

  遺言書 エンディングノート
法的効力 あり(死後に有効) なし
書き方 規定された書き方で書かないと無効になる 自由に書き進めることが出来る
費用

自筆証書遺言:11,000円~

公正証書遺言:16,000円~

数百円~
伝えるに向いてる内容 財産の分け方について

葬儀の方法

供養の方法

余命宣告の考え方、認知症になったらどうして欲しいか

 

エンディングノートは、法的な効力がない反面、形式や書き方にとらわれることなく、自分の望ましい考え方を自由に書く事が出来ることが特徴です。

 

財産については「遺言書」で伝え、葬儀など供養についての希望や、余命宣告や脳死状態になった時、認知症になった時に自分の考えを伝えるのは「エンディングノート」と分けて活用することも方法です。

 

法的な効力はありませんが、自分の意志を伝えることが出来なくなった時に「思いを伝える」ことができる、とても大切な役割を果たしてくれるノート。

 

それが「エンディングノート」と言えるでしょう。

 

◆エンディングノートを学ばれる方へ◆

 

エンディングノートというものは、ここ5年から10年で出来た、本当に画期的な「伝える方法」だと思っています。

 

これから生きていく中で、「死」は決して避けては通れないことと認識して、いち早く関心を持ってエンディングノートについて学ばれる方は、本当に先見の目が有るものだと思われます。

 

関心のある方は是非、「エンディングノート」と「遺言書」について詳しく学び、ご理解いただければと思います。

 

 

5、遺品整理の現場から見た遺言書

 

遺言書やエンディングノートの書き方、そのものが持つ役割について、これまで説明してまいりましたが、我々が携わっている遺品整理の現場での「遺言書」について考えていきます。

 

①遺品整理の現場で見つかる遺言書

 

遺品整理業務の現場で多くあるのは、ご依頼者であるご家族やご遺族が知らぬ形で遺言書が見つかるケースです。

 

今、世間では世帯別に分かれて暮らすご家庭、高齢者のみで暮らすご家庭が増えてきています。

 

ご家族内の関係が希薄化し、ご家族が亡くなっても「どう遺品整理をしたらいいか分からない」と思っているご遺族の方が増えてまいりました。

 

故人の思いが汲めず、捨ててはならない物を捨ててしまうのではないかと不安になるご遺族の方も多いかと思います。

 

そうした状況の中で、遺品整理を行っていると、見つかるのが「エンディングノート」なのです。

 

遺言書やエンディングノートが、「故人の最期の声を伝える事が出来るもの」として注目され、広く認知されたことから、ご家族が知らぬ間に準備され、遺す方が増えてまいりました。

 

特に遺言書が見つかった場合は、その意向に沿って遺品整理を進めていかなくてはなりません。

 

これが有るのと無いのでは、その後の対応が大きく変わってきますので、遺言書やエンディングノートの有無は遺品整理作業にとっては重要な役目となってきます。

 

②遺言書で起こり得るトラブル

 

遺品整理作業中、急に遺言書が見つかったため、起こり得ることは「遺言書の内容が火種となり、トラブルに発展する」ということです。

 

遺品整理業者が業務として携わることとは直接は関係ありませんが、ご家族が遺言書の存在を知らず、遺言書の内容から「○○を○○さんに譲ってほしい」、「一切の財産、遺品を○○さんに譲る」など、その相手がご家族以外の場合には、トラブルに発展する場合があります。

 

だからと言って我々遺品整理業者は遺言書を発見すれば、必ずご遺族の方に報告する義務がありますので、ご報告はさせていただきますが、やはりそのようなトラブルは見たくはありません。

 

このようなことがないためにも、ご家族間でコミュニケーションを図って、「遺言書」の作成や「エンディングノート」の作成を是非ともオススメします。

 

 

6、遺言書にかかわるトラブル事例と防止策

 

◆トラブルにはどんなものが有るのか?◆

 

①遺言書が無理やり書かされたものであった

②家族以外に財産を渡すと遺言書に書いたことで、ご家族が争いになった

③遺産分割が終了した後に遺言書が出てきてトラブルになった

④自筆証書遺言の日付が間違えていた

⑤遺言書の字が読めないことでトラブルになった

⑥遺言書をビデオで残してたのでトラブルとなった

⑦相続人が子供二人だけだから、遺言書は作成せず、トラブルになった

⑧遺言書が無いことでトラブルになった

⑨自筆証書遺言のせいでトラブルになった

⑩遺留分を無視した遺言書を残していた場合にトラブルになった

⑪遺言執行者とトラブルになった

 

遺言書はそのものが法的な効力を持つため、遺言書を欠いた際の状況がどのような形であっても、その内容が法的執行されることがあります。

 

書き方ひとつで無効になることもありますが、亡くなった後、「故人が所有するものをどのように遺したいか」「亡くなった後に叶えてほしい希望はどんなことがあるのか」ということを示すものが「遺言書」なのです。

 

場合によっては遺言書が火種となって、ご家族同士やご家庭と故人の大切な方たちとトラブルになることだってあるのです。

 

もちろん大切なことを伝えるために書き残すものであるため、その内容を捻じ曲げてまで穏便に事が済むように書く必要はありませんが、書いた事でトラブルになることも覚えておきましょう。

 

◆トラブルが起きないようにするためには◆

 

無理に財産を相続するために、故人となる方に自分に有利になるように書かせたりという行為は、半ば脅迫と変わりありません。

 

そうした状況下で遺言書を作成するのはもってのほかですが、遺言書は故人が死後に願う希望を伝えるものでありますので、正確に希望を伝える意味でも「家族とコミュニケーションを図りながら作成する」ことを重視し、作成することがトラブルを防ぐいちばんの近道だと思います。